腫瘍と嚢胞での造影効果の差
一般的に造影CTにおいて腫瘍は造影され、嚢胞は造影されない。
しかしbeam hardening効果などのアーチファクトにより嚢胞も造影されてしまうことがある。
ではどのようにして腫瘍と嚢胞を区別するのだろう。
それは造影効果の程度で区別することができる。
では具体的にどの程度の造影効果があれば腫瘍を疑えばいいのだろうか。
それについては、CT値による造影効果の有無の判断基準が役に立つ。
CT値による造影効果の有無の判断
+10以下
アーチファクトによるもので、造影効果なし
+10~20
判定困難、他の検査方法も考えるべき
+20異常
造影効果あり
出典:レジデントのための画像診断の鉄則 医学書院
つまり造影前から造影後のCT値の差が+10HU以下であれば造影効果なしと考えられ嚢胞が疑われる。
+20HU以上であれば造影効果ありと考えられ、腫瘍が疑われる場合があるということである。
+10~+20の間は判別不能であり、鑑別のためにはほかの検査を考慮する必要がある。
感覚的に造影されているかどうかを判定するだけでなく、このような判定基準を知っていればより自信をもって読影できるだろう。
MRIにおける腫瘍と膿瘍の区別の仕方
MRIのT1では腫瘍も膿瘍もリング状に増強され区別することができません。
しかし拡散強調画像(DWI)を使うことでこの二つを鑑別することができます。
腫瘍はその辺縁が増強されT1と同じようなリング状に増強されます。
膿瘍は逆に中心の液性成分が増強されます。
CTとMRIを比較してみた
CTとMRIの特徴を比較してみました。
コントラストの良しあし、費用、撮影時間、被爆の有無について比較すると以下のようになりました。
|
CT |
|
コントラスト |
まあまあ |
良い |
費用 |
安い |
高い |
撮影時間 |
早い |
長い |
被ばく |
あり |
なし |
CTはMRIほどコントラストをつけた画像を得られにくいので、時としては造影剤の使用が必要な場合があります。
MRIはコントラストの高い画像が得られますが、撮影時間が長く、救急患者にはあまり向きません。
また撮影時間が長いため呼吸で動きのある臓器の撮影には向いていません。(肺など)
撮影の制限に関しては、MRIは体内金属があると撮影できない場合があります。
CTの場合は小児などでは被ばくの影響の観点から撮影することができません。
ケースバイケースでどちらの検査が良いか考え使い分けることが必要です。
一般的には胸部・腹部はCT優先で、それ以外はMRI優先と言われていますが例外も多いです。
MRIのIn phaseとOpposed phaseとは?
通常MRIは水と脂肪の信号を同時に記録している。
例えば水の信号が4、脂肪の信号が2とすると、4+2で6の信号として記録される。(左の図)
この脂肪の信号を逆の位相で記録することもできる。
つまり水の信号は4のままで、脂肪の信号が-2となり、4-2で合計2の信号として記録することができる。(右の図)
このように脂肪の信号を逆にする撮影方法をOpposed phase(逆位相)といい、通常通りに撮影する方法をIn phase(同位相)という。
主にOpposed phaseは脂肪抑制画像では確認しづらい組織の一部に脂肪が沈着していることを確認するときなどに利用される。
CTってX線の何倍の被ばく線量なの?
放射線被ばくの生じる画像検査としては主なものとして胸部X線撮影、CT撮影、上部消化管検査、核医学検査、PET検査、マンモグラフィがあります。
それぞれの被ばく線量はどのくらいなのでしょうか。
胸部X線撮影
0.06mSv
CT撮影
5~30mSv
上部消化管検査
3mSv
核医学検査
0.5~15mSv
PET検査
2~10mSv
2mSv
出典:赤羽,Innervision,25,46-49,2010
上の表からCT、核医学、PETは撮影する範囲で被ばく線量が変わることが分かります。
当然、頭部のみのCTよりも骨盤から頭部までのCTの方が被ばく線量が多くなります。
被ばく線量を分かりやすくグラフにすると以下のようになります。
なおCT、核医学、PETは最低線量でグラフにしています。
これを見れば明らかなように胸部X線の線量はCTよりもかなり少ないことが分かります。
数字でこの2つを比較すると、CTは胸部X線の83倍の被ばく線量があることが分かります。
それほどCTは被ばく線量が多いのです。
このことから被ばく線量を抑える必要がある子供の場合などにはX線撮影が有用であることが分かります。